2023年7月

本レポートは、CCCMKHDがT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
 

食品ロス対策がマーケット構造を変える
 食品ロスは世界的にみても大きな問題になっています。直近の21年度の国内における食品ロスは523万トンと世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量年間440万トンの1.2倍にも上るほどふくれ上がっています。この量は国民1人当たりの排出量でみると、お茶碗約1杯分(約114g)が毎日廃棄されている状況に相当します。政府は2000年度の食品ロス量980万トンを2030年度には489万トンまで削減する目標を打ち出しています。全体では削減傾向にありますがまだ目標には遠く、生活者・事業者ともに改善に向けた取り組みが必要な状況です。
 こうした食品ロスの削減に貢献する取り組みとしてメーカー・リテイルのアクションが加速しているのが食品の賞味期限・消費期限の見直しです。そして、この期限の見直しに伴う商品の変化が食品産業の中ではシェアの転換につながる可能性もあり、大いに注目されるところです。
 コンビニエンスストアでは、セブン‐イレブン・ジャパンが弁当のチルド化を進めています。常温弁当の消費期限が約20時間なのに対し、チルド弁当の消費期限は1.5日~3日と長く、ロスの発生を抑制する上でも有効なアプローチとなります。利用についても常温弁当から徐々にチルド弁当への転換が進んでおり、ベンダーの生産体制は今後、さらにチルドシフトが進展してくることは間違いなさそうです。
 コンビニ業界ではさらにローソンがおにぎりの冷凍販売の実験を開始し注目されるところです。まだ対象商品は6品、実験店舗は21店舗と少ない状況ですが、同社では動向を見ながら販売エリアを拡大し、25年度には全国拡大も視野に実験を進めているところです。
 成長拡大が続くカット野菜市場でもサラダクラブが消費期限を従来の3日から4日に延長し、フードロス削減に向けた取り組みを進めています。カット野菜は生活者のストックニーズが強く1日でも消費期限が延びると利用は大きく変化する可能性があります。
 同様に食品メーカーについても消費期限延長に向けた取り組みは加速しています。日清食品チルドでは従来の賞味期限である20日から60日まで延ばした商品を今秋から展開しますが、この期限延長によりチルド麺は従来とは異なり、冷蔵庫に常備されるアイテムへの転換可能性も含んでいます。
 包装技術の発達やメーカー、リテイルの企業努力により食品の賞味期限・消費期限は従来よりも大幅に延びてきています。従来は短日消費だったアイテムもこうした企業努力によりストック型の消費へ転換するなど、生活者の利用形態も変化しつつあります。食品は常温・チルド・冷凍と温度帯による違いで市場分化してきましたが、今後はアイテムによっては従来の温度帯とは異なる温度帯への拡張・転換可能性もあります。企業イメージの転換にもつながり、利用転換も図ることができる食品ロス対策は今後もますます重要性を増す取り組みの一つと言えそうです。


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※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


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CCCマーケティング総合研究所
担当:奥田